私たちのやりとりを茫然自失と言った体で見つめていた寛道(ひろみち)が、
「なんだ。そっちも一方通行かよ」
ってつぶやいて。
何が?って思ったけれどややこしくなりそうな気がして聞かなかったことにした。
「花々里(かがり)。――お前、行くトコないんならおばさんが元気になるまでうちに来いよ」
聞かなかったことにしたのに、めげない寛道はそんな提案を投げかけてくる。けど寛道の家だって5人家族。
一軒家ではあるけれど、私に割けるような余剰の部屋なんてなかったはずなの。
そう思って、 「有難いけど部屋とか余ってないでしょ」 って冷静に返したら、 「そんなん! お、俺の部屋でいいだろっ!?」 とか。 バカなの!? 「さすがにダメでしょっ」即却下。
「バカっ。その場合は俺、弟たちの部屋だからな!? お、お前と一緒に居てやると思うなよ!?」
って。
ねぇ、居てやるって何?
居てくれない方がいいって思われるとか思ってないの? 信じらんない。でもそれ、尚のことダメでしょ。
「迷惑になるじゃないっ」って言ったら「全然」って……。
バカね、寛道。
私が言ってるのは弟さんたちに対して、の話。あなたがどう思うかなんて、聞いてない。
*** 「花々里、そろそろお昼を食べに行こうか」寛道とまだ話している最中なのに、まるでそれを断ち切るみたいに頼綱(よりつな)が言ってきて。
お昼、という言葉に頼綱にすっかり飼い慣らされてしまったお腹の虫がグゥーッと返事をする。
さ、さすがに2人の男性の前でこれは恥ずかしい……っ!